「新 たのしく
書く道具」が
できるまで

中編vol.25

「新 たのしく書く道具」鼎談の中編です。
ぜひ前編からご覧ください。

お話を聞いた人

広瀬 琢磨:
カキモリの代表。
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小泉誠:
Koizumi Studio代表、家具デザイナー、「新たのしく書く道具」のインク瓶やペン軸等をデザイン。
koizumisan

関 宙明:
ミスター・ユニバース代表、アートディレクター。「カキモリ」という名前やロゴの生みの親。
Sekisan


書く人とともに、豊かな時間を積み重ねていける「古道具」を


広瀬:
プロダクトの候補はいくつかありましたが、まず見直したかったのはインク瓶でした。
hirosesan
小泉さん:
カキモリのスタッフさんから送られてきた「インク瓶の市場調査」があまりに詳しすぎて、僕は独自のアイデアを出す自信がなくなりました(笑)。
あの素晴らしすぎる資料は、デザイナーキラーですよ(笑)。
Koizumisan
広瀬:(笑)。
hirosesan
関さん:(笑)。
Sekisan
小泉さん:
カキモリのインク瓶は、どんな風に使われるだろうと考えたとき、「古道具」というイメージが出てきました。そこで、僕自身が思う古道具の三原則を出しました。

素材なりのタフさを持っていること
機能が十分であること
情緒的であること

美しいとか愛着といった感性を揺さぶるものが使い続けられて、古道具になるんじゃないかと。
Koizumisan
広瀬:
資料の中にも「100年後、このインク瓶が見つけられたときにいいなと思われるものをつくりたい」という文言が入っていたんですよね。あれは、「古道具」に近い感覚だったかなと思います。
hirosesan
小泉さん:
そうですね。プロダクトが形になる前にお互いに共感し合って、目指す方向性が見えた。
Koizumisan
広瀬:
小泉さんの「機能が八分も十二分」もダメという言葉も、印象に残っています。つい、できてしまうからと華美にしたり性能を加えすぎたりしがちですが、その言葉で、プロダクトとパッケージの方向性が定まった気がします。
hirosesan

その場で愛称がついた、たのしく愛おしいインクボトル



広瀬:
インク瓶については、5種類の形状を提案いただきました。スタッフの推しは圧倒的に「丸」でしたね。
hirosesan
関さん:
スタッフさんの間ではすぐに、「丸」に「大福」という愛称がついたと訊いて、それはすごいことだと感じました。一目で惹きつけられ、愛着が湧いた証拠。
Sekisan
小泉さん:
それぞれ思い入れはありますが、「丸」は中でも気に入っていました。しずくを連想させる大福型は、南部鉄器がつくられる過程で、熱でドロドロに溶けた鉄が弾けて固まったときの形状から発想しています。液状の鉄から形づくられる鉄器と同じで、インク瓶も、高温でドロドロに溶かされたガラスから生まれます。デザインするときも、ガラスが固まる前の流体らしさが瓶の形に残り、液体であるインクと瓶が一体に感じられるような形になれば……と思っていました。
この形には機能的な理由も、物語も、見た目から感じる印象も含まれていて、思い入れがありましたね。
Koizumisan
広瀬:
ボトルの高さがこれまでよりも低くなり、かわいらしいだけでなく使いやすくなりました。
hirosesan
小泉さん:
もうひとつ、瓶底のナーリング(破損防止のための瓶底のギザギザ)がノイズに感じていたんですよね。製造元にしつこく訊ねると(笑)、ギザギザの代わりに文字を入れたことがあったと教えてくれたんです。「kakimori」という文字が入ったらいいかもしれない。入れるなら、これまでのカキモリを知る関さんにゆだねたいと思いました。
Koizumisan
関さん:
ありがとうございます。文字が入ることで、道具に意味合いが出てきましたね。
Sekisan


つくり手の誇らしげな表情が、幸せな道具の証明



広瀬:
出来上がった瓶は、自分で言うのもなんですが惚れ惚れします。自然にできたガラスだまりもいいですし、リサイクルガラスの風合いが感じられますね。
hirosesan
小泉さん:
ガラス瓶工場に初めてお邪魔しましたが、鳥肌が立つほど感動しました。あれだけのスピードで量をつくるには、圧倒的なパワー、エネルギーが必要なんだって。
工場で働く社員の方とは、お互いいいものをつくろうと粘りあった気がします。出来上がった時、現場の方が誇らしげだったのはうれしかった。
Koizumisan
広瀬:
作り手のみなさんが喜んでくれている姿が一番ぐっと来ますね。工場の社員さんは、つくったものをいつも娘さんに見せているそうで、普段は「ふーん」とそっけない反応なのに、カキモリのインク瓶は「かわいい!」と言ってくれて、苦労が報われたとうれしそうでした。
hirosesan
小泉さん:
それ、めちゃくちゃうれしいですね。
Koizumisan
関さん:
カキモリは、オーダーインクというこれまでになかったサービスを大事にしているのに、瓶は出来合いのもので続けていいのかと話し合ってきた中で、ついに生まれたプロダクト。出来上がりを見て、僕もとにかくうれしかったです。
Sekisan

ものづくりを通じた地域とのつながりは、全国に広がっていく



広瀬:
インク瓶を考えながら、インクを使うものをつくろうと、つけペンとペンレストが生まれました。話す中で、木がプロダクトのひとつの象徴になりましたね。
hirosesan
小泉さん:
自分たちが培ってきた「地域の素材を使う」という経験値と、桜は日本らしいといった話から、木を使うのもいいのかなと思っていました。広瀬さんも、木の話をするとオンライン越しで頷いているんですよ(笑)。
Koizumisan
広瀬:
インク瓶は大きな工場で、つけペンの木軸やペンレストは地方の小さな工房で、染めや仕上げは蔵前でと、今回のプロダクトは、全国の工場や工房の協力でできています。 カキモリは、蔵前周辺の地域とのつながりを大事にしてきましたが、小泉さんとともにプロダクトづくりに取り組むことで、そのつながりが全国へと広がっていきましたね。
hirosesan


全国の仲間と作り上げたプロダクト。
続く後編では、みなさんへどのように伝え、届けるか、
を話しました。



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