石本さんと
色をつくる

石本藤雄さんvol.07



東京・青山の​「スパイラル」​にて、2019年6月19日より30日まで、展覧会​「石本藤雄展 ―マリメッコの花から陶の実へ―」​が行われました。
スパイラルは、「生活とアートの融合」をテーマにした複合施設です。ギャラリー、カフェ、生活雑貨を扱うショップなど、多様なスペースがあります。
私たちにとってスパイラルはあこがれの場所。新しいプロダクトや、普段は接点が少ないアートに触れることができる場所として、多くのスタッフが自分の興味にあわせて展覧会やイベントへ通っています。





今回スパイラルで開催される展覧会は、テキスタイルデザイナー・陶芸家の石本藤雄さんの作品展です。
石本さんはフィンランドのライフスタイルブランド「マリメッコ」で、長年に渡りテキスタイルデザイナーとしてご活躍された方です。



石本藤雄(Fujiwo Ishimoto)<br />
1941年愛媛県砥部町出身、フィンランド・ヘルシンキ在住。1970年にフィンランドに移り、1974年から同国を代表するライフスタイルブランド「マリメッコ」で32年に渡りテキスタイルデザイナーを務める。現在はフィンランドの老舗陶器メーカー「アラビア」のアート部門の一員として陶芸制作に取り組む。カイ・フランク賞、フィンランド獅子勲章プロ・フィンランディア・メダル、日本では旭日小綬章など多数。
石本藤雄(Fujiwo Ishimoto)
1941年愛媛県砥部町出身、フィンランド・ヘルシンキ在住。1970年にフィンランドに移り、1974年から同国を代表するライフスタイルブランド「マリメッコ」で32年に渡りテキスタイルデザイナーを務める。現在はフィンランドの老舗陶器メーカー「アラビア」のアート部門の一員として陶芸制作に取り組む。カイ・フランク賞、フィンランド獅子勲章プロ・フィンランディア・メダル、日本では旭日小綬章など多数。



この展覧会に合わせて、スパイラルよりお声掛けをいただき、石本さんが実際に調色をして作った色のインクを限定生産することになりました。
石本さんがマリメッコで手掛けてきたテキスタイルは、草花など自然をモチーフに鮮やかな色彩に溢れています。



現在は陶芸家として、数多くの作品をつくられており、本展覧会でも、​最新作の《冬瓜》で侘び寂びの世界観を表現する展示をみることができます。







「色をつくる」石本藤雄さん








多彩な色を扱ってきた石本藤雄さんが「色をつくる」とき、​どんな色が生まれるのだろう。
私たちは、緊張しながら、でもこれから目の前で始まることにわくわくと興奮していました。
そんな中、スパイラルの会議室で、インクスタンドの調色キットを準備しているときに石本さんが到着されました。

早速スパイラルの方から改めて趣旨の説明と、インクスタンドのスタッフから調色方法をお伝えしたところ、

「色って難しいんだよね。」
とひとこと。

石本さんがマリメッコでお仕事されていたときのことを伺うと、
「マリメッコでやっていたときは、サンプル色の生地が2,000色位あるの。そこから選ぶから、色をつくるっていうのはあまりやらないの。」

「だから、配色きめるときはまずは色のチップを整理するね。2,000チップだから机が大変なことになっちゃう。でも全部みて、全部の可能性からきめたいから。」

「まずは柄があり、そこに配色していく、という流れ。だからマリメッコでは一つの柄に対して32年間で100パターンくらいだしたものもあるよ。」






しばらくのあいだ調色キットを眺めた後、
「じゃあ、オレンジやってみますね。」
と、手を動かしはじめました。

「2滴、3滴……ちょいと濃すぎたね。
もっと黄色が欲しいんだけど。」
インクを一滴ずつカップにたらし、ガラス棒で混ぜながら、色味に変化を加えていきます。





「6滴と2滴。
でも強いね、オレンジが。ちょっと変えてみます。」

ベースにする色を変えたりしながら、手を動かすこと数分。
目指していた色にたどり着いたのか、カップの中の色を見て、

「これで色を描いてみます。」

ガラス棒についたインクを紙にのせました。

「もう少し入れてみます。」

かいて見た色が想像とは違ったのか、また1滴ずつインクを足したり、紙にかいたりを数回繰り返し、
ある色にたどり着いたところ、少しとまってひとこと。

「ミカン色です。」




「まあ、ミカンもいろんな色があるけどね。」
と少しはにかみながら、一息ついていました。


「そしたら、次は青。朝顔。」

先程のミカン色と同じようにまずはベースカラーを選んで、
一滴ずつカップにたらし、色をみながら比率を調整していきます。










「朝顔もいろいろあるんだけどねー、これじゃあない。」

「これではマリンだよな。」

「ほど遠いな、薄めるのもある?」

ベースカラーを変えたり、うすめ液を加えたりしながら、色を探していきます。

「いけるんじゃない、これ。」

カップを見ながら、石本さんが小さな声でつぶやきました。
そして朝顔色が出来上がりました。





最後に色に名前をつけていただきました。

「​ミカン色​のミカンはひらがなでしょ。
『色』もひらがなかな。」

「昼の朝顔はしぼんじゃってるからね。朝の朝顔。
でも朝顔はひらがながいいね。」

ということで色名も決まりました。

「みかんいろ」
「朝のあさがお」

かわいらしく、でも凛としている、とても素敵な色名です。



石本さんのご実家は、愛媛のみかん農家。
直感的にオレンジを選んだのでしょう。

そして、朝顔は、学生時代の夏の朝に咲いているのを見てきれいだな、と思ったことを思い出したんだよ。
とお話しされていました。

この出来事から、色には「思い出」を彩り「物語」が宿る力がある、と感じました。

石本さんの思い出と物語が吹き込まれた2色のインク。

書くたびに、柔らかな色が実る畑や、涼やかな色が花ひらく朝の景色が浮かんでくるような気がします。






有名な愛媛県のみかん農家で生まれ育った思い出をもとに作られた「みかんいろ」。




『限定インク Fujiwo Ishimoto みかんいろ』 2,700円(税込)
『限定インク Fujiwo Ishimoto みかんいろ』 2,700円(税込)


夏の朝、みずみずしく、そしていきいきと花を咲かせるあさがおの色をイメージした「朝のあさがお」。




『限定インク Fujiwo Ishimoto 朝のあさがお』 2,700円(税込)
『限定インク Fujiwo Ishimoto 朝のあさがお』 2,700円(税込)