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インクを使う「つけペン」は、万年筆の登場までずっと、
書く道具のスタンダードでした。
書くこと自体が特別になった今、
あらためてつけペンの魅力が見直されています。
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つけペンのひとつ、ガラスペンの人気は年々高まり、
作家さんや職人さんが一本ずつ手仕事で
丁寧につくっています。
ただ、一人で作れる生産量は月に数十本ほど。
「つけペンをもっと多くの人に楽しんでほしい」
という想いから、カキモリでは、
2018年にガラス製のペン先「Glassnib」を発売しました。
しかし、ペン先だけとはいえ手作りのため、
在庫切れも続きました。
これ以上、お客様をお待たせしたくない。
わたしたちは、多くの方に届けられるペン先を
つくることにしました。
ペン先の素材は、昔からある竹や筆はもちろん、
陶器や樹脂まで検討しました。
ガラスペンの特徴は、
一度インクをつければ数行書けるインクの保持力や、
洗って使い続けられること。
その良さを保ったまま量産できるのは
「金属」ではないかと考え、
友人の山崎勇人さんに相談しました。
山崎さんは、金属のマテリアルを得意としていて、
エンジニアリングとデザインの両面からものづくりに
取り組んでいるプロダクトデザイナー。
「難しそうだけどやってみよう」。
山崎さんと生産を担う松下製作所の松下さんの協力を
いただき、開発がスタートしました。
![](https://tanoshiku-kakuhito.com/letters/wp-content/uploads/2021/11/metalnib_4.jpg)
インクを保持する溝は何本切るか、
溝の形状はストレートか螺旋か、
ペン先に適した金属は何か……
山崎さんと松下さんがひとつひとつ課題に向き合い、
設計と試作を繰り返してくれました。
カキモリからもたくさんの要望を伝えました。
お二人には大変なご苦労をかけてしまいましたが、
数十回の試作を重ねて完成したのがこのペン先です。
![](https://tanoshiku-kakuhito.com/letters/wp-content/uploads/2021/11/metalnib_3.jpg)
今回、特に工夫を重ねたのは溝の入れ方。
1本の溝に見えますが、異なるドリルで先端は浅く、
軸に近い部分は深く切削しています。
少しのズレも許されず、手間もかかる仕様ですが、
書き味はなめらか、インクもしっかり保持できます。
驚いたのは、選ぶ金属で書き心地がまったく違うこと。
真鍮はやわらかな書き味で、
カリグラフィーのような筆記線になります。
ステンレスは固めな書き味で抜群の安定性。
両方捨てがたい魅力があり、ひとつに絞ることはやめました。
ペン先とペン軸との接合部分が0.01mm単位で
調整されるなど、先進技術あってのペン先ですが、
どこか懐かしいビジュアル。
機械でつくる工業製品と、温かみある工芸品の間を
たゆたうようなプロダクトになりました。
「Metalnib」と名付け、お届けします。
みなさまと一緒に「Metalnibのたのしみ方」を見つけ、
力を尽くしてくれたお二人に
報告する日が今からたのしみです。
![](https://tanoshiku-kakuhito.com/letters/wp-content/uploads/2021/11/metalnib_7.jpg)