「手漉き和紙」と聞いて
思い浮かべるものはなんですか?
千代紙と呼ばれる和柄の紙?
端がふわっとしてる日本酒のラベル?
障子や襖?
さらに「手漉き」となると?
観光地によくある「手漉き体験」とか?
当初、私たちのイメージはこのようなものでした。
こんな私たちですが、「山次製紙所」の山下さんに出会ってからというもの、和紙への認識は大きく変わりました。
山次製紙所では主に、手漉きで「美術小間紙※」を制作しています。
※)小間紙:装飾用に加工した千代紙や包み紙、巻紙などのこと
製紙所のある福井県の越前五箇地域は、1500年の歴史を誇る日本最大の和紙産地です。
越前五箇地域の和紙は、その品質の高さから江戸時代には「藩札※」に用いられ、その後、明治政府により紙幣の抄造技術にも応用されました。
※)江戸時代、各藩が独自に発行した紙幣
明治時代の初期、「紙」といえば「手漉き和紙」のことを指し、洋紙の流通はほぼありませんでした。
当時和紙は、日本における一大産業として栄え、襖や障子、さらには美術品まで、幅広い用途に用いられ、日本各地に和紙の産地がありました。
また、海外でも高い評価を受け、大量の和紙が輸出されました。
その後、大量生産可能な「機械漉きの洋紙」が伝わり、日本国内を流通する紙のほとんどは洋紙となります。
そして現在、和紙の産業は消滅しつつあると言っても過言ではないほどに衰退しています……。
需要減
高齢化
過疎化。
今回、私たちが出会った山下さんは、和紙産業を継ぐ一人として、
この厳しい状況に抗いながらも、進化させる強い意思と行動力を持っている方でした。
何よりも、和紙の魅力と可能性を信じていました。
そんな山下さんのその思いに突き動かされ、
私たちは山次製紙所を訪れたのです。
美術用の小間紙を手漉きで作っている工房。
「伝統工芸ではあるけど、産業として進化していきたい」
最初、私たちには山下さんの言葉の意味することが理解できませんでした。
いえ、今でも頭では理解できてるようでその本質はわかっていないのかもしれません。
この言葉は、和紙に限らず日本の伝統工芸全体にも言えることなのだとも考えます。